イシュタル・・・月神シンの娘。シュメール神話のイナンナがアッカド人のもとで名をかえて
イシュタルとなった。

 

 

イシュタルは姉のエレシュキガルが支配

する地下界へ下る決心をした。

地下界は <暗黒の家><入るものは出るこ

とない家><住むものは光りを奪われる家>

とよばれており、そこへいく道は

<歩みゆく者はもどることのない道>と記されている。

死者はそこで、翼のついた衣服を着て、

ほこりと粘土を食べ暗闇の中に住んでいます。

女神イシュタルは地下界の門に近づき

門番に言った。

「門番よ、門をひらきなさい。わたくしを

入れないならば戸を打ち破り

かんぬきを壊します。死者をよみがえらせ生者

より死者が増えるようにしてやります。」

門番は怖れをなし地下界の女王エレシュキガル

に伝えました。

女王の顔は青ざめ苦々しそうに言った。

「なんのために彼女はここへやってくるのか。

地下界に下った誰かのためだろうか。

番人よ、行って門をひらき古いしきたりに

したがって迎えなさい」

番人は入り口に戻り女神に言った。「御入りく

ださい。女神さま。地下界は

あなたさまを歓迎いたします。」

イシュタルが第一の門に入ると、番人は女神

の大王冠を持ち去りました。

「番人よ、なぜ私の大王冠を持ち去るのですか?」

「女神さま、これが地下界のおきてなのです」

番人は言った。

イシュタルが第ニの門に入ると、番人は女神の

耳飾りを持ち去りました。

「番人よ、なぜ私の耳飾りを持ち去るのですか?」

「女神さま、これが地下界のおきてなのです」

番人は言った。

イシュタルが第三の門に入ると、番人は女神の

首飾りを持ち去りました。

イシュタルが第四の門に入ると、番人は女神の

胸飾りを持ち去りました。

イシュタルが第五の門に入ると、番人は女神の腰帯を持ち去りました。

イシュタルが第六の門に入ると、番人は女神の腕環と足環を持ち去りました。

イシュタルが第七の門に入ると、番人は女神の体の

腰布を持ち去りました。

こうして女神イシユタルは素裸にされて地下界の宮殿に着きました。

イシュタルの姉で地下界の女王である

エレシュキガルは、気難しい顔をして

王座に座っていました。妹の女神が近づいて

くるのを見て、腹を立てて

侍従のナムタルを呼び付けていいました。

「ナムタルよ、女神イシュタルを宮殿の

奥室に閉じ込めなさい。

そして女神に恐ろしい六十の悪霊を襲わせなさい。

彼女の目、腹、足、心臓、頭

あらゆるところが病気になるように彼女の全身に向けて悪霊をはなちなさい。」

こうして女神イシュタルが地下界で病気に

なると地上の世界では

植物が繁らなくなり、人間たちもすっかり

元気がなくなってしまいました。

神々の侍従であるパプスッカルは、

地上界がすっかり活気を失い、神々への

捧げ物も少なくなり人間たちの神々への

奉仕がなくなってしまったことに困惑し

月神シンに訴えました。

神々の集まりであるアヌンナキではこのことを相談し、結局いつものように知恵の神

エアが女神イシュタルを助けることになりました。

エアは心に姿を思い浮かべて使者アスシュナミルを創り出しました。

そしてこう言いました。

「アスシュナミルよ、地下界へ行きなさい。

地下界の七つの門は、おまえが行くと

開かれることなっている。地下界の

女王エレシュキガルはおまえが近づくと

喜ぶだろう。それから彼女に大神たちの名

を呼んで呪文をかけなさい

そうすれば彼女の気持ちは静まりおだやかになるであろう。

それから彼女の側にあるスハルジク

(命の水を入れてある袋)を指差し水が

飲みたいと言いなさい。何とか口実を

つけてそれを受け取り

死にかけている女神イシュタルにそれを

注げば女神は生き返るであろう」

アスシュナミルは地下界へ出発し七つの門を通って女王エレシュキガルのもとに

姿を現した。女王は知恵の神エアの使者

の訪問を喜びましたが

アスシュナミルがスハルジクを指差し水

を飲ませてほしいというと

怒り出して言った。

「おまえは言うべきではないことを口にした。

わたくしはおまえに大きな呪い

をかけてやろう。おまえはこれからどぶの中に

住み人々のあなどりを受けるのです」

しかしエアの使者アスシュナミルは知恵の神

エアから授けられたとっておきの

計略を用いて地下界の女王の考えを変えさせ、

女王は突然女神イシュタルを

助ける気になりました。

女王は侍従ナムタルに言いました。

「ナムタルよエガルギナ(裁判の間)を

飾りたてて、大神たちを黄金の王座に

御連れしなさい。」

これは神々の裁判をもう一度やりなおし、

女神イシュタルの

有罪判決を取り消すためだったのかもしれません。

女王はナムタルにスハルジクに入ってる
水を女神にふりかけ地上へ

返してやるよう命令した。

ナムタルは命令通りにして、女神イシュタルを地下界から見て第一の門から

第七の門まで案内しました。

第一の門を通らせてから、ナムタルは女神に

腰布を返しました。

第二の門を通らせてから、ナムタルは女神に

腕環と足環を返しました。

第三の門を通らせてから、ナムタルは女神に

腰帯を返しました。

第四の門を通らせてから、ナムタルは女神に

胸飾りを返しました。

第五の門を通らせてから、ナムタルは女神に

首飾りを返しました。

第六の門を通らせてから、ナムタルは女神に

耳飾りを返しました。

第七の門を通らせてから、ナムタルは女神に

大王冠を返しました。

 

 

 

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